一般的に、ハイブリッド車の加速力はガソリン車の加速力よりも優れているとされています。
これは発進時や加速時にモーターのアシストを受けられるためです。
そこで今回は、ハイブリッド車の加速力に焦点を当て、2018年の販売台数ランキングの中から売れ筋のハイブリッド車をピックアップして加速力を数値化、ランキング形式で紹介します。
※記事中の燃費表記は、特に断りのない限りJC08モードで計測した数値です。
目次
加速力の指標について
車の加速力を表す指標はさまざまなものがあります。
たとえば0-200m(ゼロニ)や0-400m(ゼロヨン)のタイム、0-100km/hの速度到達タイムなどです。
これらのタイムは同じ条件下で計測しないと比較できませんし、必ずしもメーカーから公表されている数値ではないので、今回用いることはしません。
今回この記事で加速力の指標に使うのは「トルクウエイトレシオ」です。
トルクウエイトレシオは車両重量を最大トルクで割ったもので、常用域での加速力を計る目安になります。
このトルクウエイトレシオは、数字が小さければ小さいほど加速力がよい、ということになります。
引用:https://autoc-one.jp/nenpi/2601300/photo/0016.html
計算に用いる最大トルクはあくまでも搭載されているガソリンエンジンのもので、モーターのものは考慮しません。
なお、車両重量はグレードによってまちまちになることが多いですが、今回は「全グレード中最も重い車両重量」で計測します。
これは車両重量の軽いグレード=装備が簡略化された最廉価グレード=不人気グレードであることが多いからです。
また、駆動方式が2WDと4WDに分かれる場合、「2WDの最も重い車両重量」で計測します。
これは燃費が重視されることの多いハイブリッド車は、4WDの設定があっても敬遠されることが多いからです。SUVのハイブリッド車であっても、条件を揃えるために2WDの最も重い車両重量での計測となります。
最後に、トルクは「N・m」と「kgf・m」の2つの単位で表示されますが、今回の計算には前者を用いることにします。
【2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車:第5位】トヨタカローラ
引用:https://motor-fan.jp/article/10011820
2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車、第5位はトヨタカローラです。
計算の対象となったのはハイブリッド仕様のW×B(2WD)の車両重量1,370kg、最大トルク142N・m/3,600rpmです。
トルクウエイトレシオは1,370÷142=9.6となります。
カローラのハイブリッド仕様は1.8LのNAエンジンを搭載し、最高出力は72kW(98PS)です。
ハイブリッドシステムはプリウスなどに搭載されているものと同じ「THSⅡ」で、その性能には定評があります。
街乗りレベルではエンジン走行とEV走行が頻繁に切り替わりますが、どちらかといえばEV走行の割合の方が多く、低燃費に貢献してくれます。
この切り替え自体も非常にスムーズでシームレスですし、ノイズ自体は多少発生しているものの、室内の遮音性が高いので注意深く聞いていないとわからないレベルです。
アクセルの踏度に対するエンジンとモーターのレスポンスも鋭く、アクセルを踏めば踏んだだけの加速力を得ることができます。
最高出力自体大したことはありませんが、車両重量とのバランスがよいため、少なくとも実用レベルにおいて加速力に不満を感じることはないでしょう。
【2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車:第4位】ホンダヴェゼル
引用:https://www.webcg.net/articles/gallery/40659#image-22
2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車、第4位はホンダヴェゼルです。
計算の対象となったのはハイブリッド仕様のHYBRID Z Honda SENSING(2WD)の車両重量1,320kg、最大トルク156N・m/4,600rpmです。
トルクウエイトレシオは1,320÷156=8.5となります。
ヴェゼルのハイブリッド仕様は1.5LのNAエンジンを搭載し、最高出力は97kW(132PS)です。
5位のカローラに比べると車両重量は50kg減っているにも関わらず、最高出力は25kWも大きくなっているため、トルクウエイトレシオは8台へ突入しています。
ヴェゼルは2019年1月にガソリン仕様へターボモデルを追加し、再び販売台数を伸ばしています。しかしあくまでも売れ筋なのはハイブリッド仕様の方です。
ホンダというメーカーは、元々スポーツカーを生産するところから自動車メーカーとしての歩みを始めたこともあって、普通の乗用車でも比較的スポーティーな味付けをしてくることが多いです。
ヴェゼルの場合もその例に漏れず、元々エコカーというよりもスポーティーモデルと呼んでもよいくらいスポーティーさが際立つモデルでした。
これはハイブリッドシステムに組み合わされる7速DCTがアクセル踏度に対してダイレクト感のある反応をみせ、CVTにありがちなエンジン回転数が上がっているのに車速がついてこないという空走感のようなものがないためです。
このシフトフィールの良さが素晴らしい加速感につながっていると思います。
【2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車:第3位】スバルXV
引用:https://www.subaru.jp/xv/xv/gallery/photo.html
2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車、第3位はスバルXVです。
計算の対象となったのはハイブリッド仕様の2.0e-S EyeSight、Advanceの車両重量1,550kg、最大トルク188N・m/4,000rpmです。
トルクウエイトレシオは1,550÷188=8.2となります。
XVのハイブリッド仕様は2.0LのNAエンジンを搭載し、最高出力は107kW(145PS)です。
XVは2019年11月の年次改良で2.0Lモデルがすべてハイブリッド仕様になりました。スバルのハイブリッドシステムは「e-BOXER」と呼ばれます。
XVはスバル伝統の水平対向エンジンと、シンメトリカルAWDを搭載していますが、どちらも低重心な上に重量配分がとてもよく、スバルグローバルプラットフォームの出来のよさもあって非常に安定した走りを実現させています。
従来まであった2.0Lガソリン仕様に比べると、ハイブリッド仕様はアクセルを踏み込んだ時の応答性のよさに表れています。モーターのアシストがあるせいか、ガソリン仕様よりも俊敏な反応を見せてくれます。
またトランスミッションのリニアトロニックとの相性もガソリン仕様に比べるとよく、フィーリングがとてもシャープで気持ちがよいです。
唯一ネックとなるのが、燃費が19.2km/Lにとどまっていてハイブリッドシステムの恩恵をあまり感じられないところです。
【2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車:第2位】ホンダフィット
引用:https://autoc-one.jp/nenpi/5002853/photo/
2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車、第2位はホンダフィットです。
計算の対象となったのはハイブリッド仕様のHYBRID、HYBRID・F、HYBRID L Honda SENSING、HYBRID・S Honda SENSING(2WD)の車両重量1,080kg、最大トルク134N・m/5,000rpmです。
トルクウエイトレシオは1,080÷134=8.1となります。
フィットのハイブリッド仕様は1.5LのNAエンジンを搭載し、最高出力は81kW(110PS)です。
4位で紹介したヴェゼルとフィットは、同じLEB-H1という型式のエンジンを搭載しています。しかし最高出力はヴェゼルの97kWに対してフィットは81kWとなっています。
これはヴェゼルがSUVで車両重量が重くなるため、セッティングを変更して高出力になるようにしたものと思われます。
ヴェゼルとフィットの車両重量を比べると、フィットの方が約300kgも軽くなります。そのため最高出力は小さいものの、トルクウエイトレシオを比較するとフィットの方が上、つまりフィットの方が加速力はよい、ということになります。
フィットのハイブリッド仕様もヴェゼル同様にトランスミッションは7速DCTを搭載しますが、やはりこのトランスミッションの出来が素晴らしく、加速感によさに寄与しています。
フィットは車両重量の軽さや重心の低さ、車体のコンパクトさなども相俟って、力強い加速と高い旋回性、軽快感のあるハンドリングでキビキビ感のある走りを見せてくれます。
【2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車:第1位】日産エクストレイル
引用:https://www.webcg.net/articles/gallery/36530
2019年おすすめの加速力のよいハイブリッド車、第1位は日産エクストレイルです。
計算の対象となったのはハイブリッド仕様の2.0X HYBRID、2.0Xi HYBRID(2WD)の車両重量1,580kg、最大トルク207N・m/4,400rpmです。
トルクウエイトレシオは1,580÷207=7.6となります。
フィットのハイブリッド仕様は2.0LのNAエンジンを搭載し、最高出力は108kW(147PS)です。
エクストレイルは今回取り上げたハイブリッド車の中では最も車両重量が重いですが、最高出力も最も高く、唯一7台のトルクウエイトレシオを叩き出しておすすめ度1位となりました。
エクストレイルのハイブリッド仕様は、出だしから非常にパワフルです。
出だしはモーターのみでの走行、その後エンジンが動き出してモーター+エンジンに、その先はやがてエンジンのみで走る、という流れですが、モーターの出力が30kW(41PS)と高出力なこともあり、エンジンのみでの巡航に移行するまでの加速が非常に力強いです。
そしてエクストレイルのエストロニックCVTは「ステップ変速制御」という機能がついており、無段変速機でありながら、あたかもATのような変速アクセント(ステップ)がつけられています。
そのためアクセルを開けるにしたがって、「グイッ、グイッ」というアクセントのついたスポーティーな加速が行われます。実際の加速力もさることながら、このスポーティーな感覚がより一層力強い加速感を感じさせてくれます。
【番外編】本当に加速力のよいハイブリッド車はホンダNSX
今回のランキングに登場させた車種は、冒頭にも触れたように「2018年の販売台数ランキングの中からピックアップしたハイブリッド車の売れ筋車種」で構成しています。
実は本当に加速力のよいハイブリッド車はこの中にはありません。
本当に加速力のよいハイブリッド車は、ホンダNSXです。
引用:https://www.webcg.net/articles/-/35529
NSXは1グレード展開となっており、車両重量は1,800kg、最大トルクは550N・mでトルクウエイトレシオはなんと3.3となります。
ちなみに3.5LのV6ツインターボエンジンの最高出力は373kW(507PS)とまさに日本が世界に誇る、正真正銘のスーパーカーです。
気になる燃費は12.4km/L、もっと気になる価格は約2,414万円となっています。
NSXの加速力は決して暴力的なものではなく、アクセルを踏めば極めてスムーズな加速をみせてくれます。怖さを感じないところが逆に怖くなるくらいです。
引用:https://www.webcg.net/articles/gallery/35529#image-7
もちろんガバっと大きくアクセルを踏み込めば、瞬間移動しているかの如く驚異的な加速力を発揮します。噂によると0-100kmの加速は3秒、つまり発進から時速100kmに到達するまでに3秒しかかからないので、速さという点でも加速力という点でもNSXは間違いなくハイブリッド車トップでしょう。
なお、NSXと並ぶ国産ハイブリッドスポーツカーにレクサスのLC500hがあります。
引用:https://www.webcartop.jp/2017/05/118866/
こちらはL PackageとS Packageの車両重量が2,020kg、最大トルクが356N・mなので、トルクウエイトレシオは5.7となります。
NSXには劣るものの、ランキングで取り上げた車種に比べると驚異的な数字なのがわかります。
3.5LのV6NAエンジンの最高出力は220kW(299PS)です。
なおLC500hの燃費は15.8km/L、価格は約1,377~1,479万円となっています。