最近の日本の自動車市場はカテゴリーを問わずハイブリッド仕様のニーズが非常に高くなっています。
そのため今までガソリン仕様しかラインナップされていなかった車種も、フルモデルチェンジを機会にハイブリッド仕様を加えるというケースがよくあります。
日産スカイラインもそんな1台で、2014年に発売された13代目となるV37スカイラインはフルモデルチェンジにあたってガソリン仕様を全て廃してハイブリッド仕様のみのラインナップで登場しました。
3か月後には先代の2.5Lエンジンを2.0Lにダウンサイジングした上でターボを搭載したガソリン仕様も追加されたため、現在はハイブリッド仕様とガソリン仕様が併売されている形となっています。
このようにハイブリッド仕様とガソリン仕様がある車種の場合、車両本体価格とスペック、燃料代や税金等のランニングコストを比較して「果たしてどちらがお得なのか」と考えることがあると思います。
そこで今回はスカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様を様々な角度から比較してみることにします。
目次
スカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の代表的なグレードを比較
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/exterior.html
スカイラインはハイブリッド仕様とガソリン仕様とでは搭載しているエンジンが異なります。
ハイブリッド仕様は3.5LのV6自然吸気エンジン(306ps・システム最高出力364ps)を搭載し、ガソリン仕様は2.0Lの直4ターボエンジン(211ps)を搭載しています。
ハイブリッド仕様に搭載されるVQ35HR型エンジンは現行型のフーガハイブリッドやシーマハイブリッドに搭載されているものと同じで、ガソリン仕様に搭載される274A型エンジンは前述のように先代のV36スカイラインの2.5Lモデルに搭載されていたVQ25HR型エンジンの排気量を2.0Lにダウンサイジングすることによって燃費性能を向上させ、動力性能の低下はターボチャージャーを搭載することで補っています。
これはいわゆるダウンサイジングターボですが、日産ではカタログなどでガソリン仕様車を「次世代ターボ車」と表現しています。
なお、駆動方式はハイブリッド仕様が2WD(FR)と4WD、ガソリン仕様が2WDのみとなっています。
ハイブリッド仕様の代表的なグレードは「350GT HYBRID Type SP」が挙げられます。
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/grade_type_sp.html
350GT HYBRID Type SPはハイブリッド仕様はもちろん、ガソリン仕様を含めてもスカイラインの中では最上級グレードに位置します。
このグレードのみ足回りは19インチのアルミホイール&タイヤやマグネシウム製パドルシフト、スポーツチューンドブレーキ、アルミペダル、本アルミフィニッシャーなどの高級装備が奢られます。
今やラグジュアリーセダンという位置付けになったスカイラインにふさわしい装備といえるでしょう。
一方ガソリン仕様の代表的なグレードは「200GT-t Type SP」になるでしょう。
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/point.html
200GT-t Type SPはガソリン仕様の中での最上級グレードとなります。
ハイブリッド仕様の代表的グレードである350GT HYBRID Type SPと比べるとスポーツチューンドブレーキこそ装備されませんが、それ以外の装備はほぼ同じです。
スカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の燃費を比較
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/exterior.html
次にスカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の燃費を比較してみたいと思います。
メーカーが公表している燃費はハイブリッド仕様が16.8~17.8km/l、ガソリン仕様が13.0km/lとなっています。
この数値はあくまでも条件の整えられた環境下で計測された燃費なので、実際にユーザーが利用する際の燃費とは異なります。
2017年6月時点で燃費口コミサイト「e燃費」に寄せられたスカイラインの燃費データを確認してみると、ハイブリッド仕様の実燃費の平均が2WDで約11.83km/l、4WDで10.42km/lとなっており、カタログ燃費の達成率はそれぞれ64.29~66.45 %、61.29~62.01 %となっています。
ガソリン仕様の実燃費の平均が約9.94km/lで、カタログ燃費の達成率は73.10~76.47 %です。
「実燃費はカタログ燃費の約7割程度出ていれば合格」という話しもありますが、この説を信用するならばスカイラインのハイブリッド仕様の実燃費はカタログ燃費との乖離がやや大き過ぎると言えるでしょう。
それではここで「価格.com」に寄せられたスカイラインの口コミの中から、燃費に関するものをいくつかピックアップしてご紹介します。
まずはハイブリッド仕様からです。
市内が11km/l位で高速に乗れば13km/l足らず、3.5Lでこの走りでこの燃費は優秀、高速だと何故かモーターで走ろうとするので結構エコな運転になる。(2WD)
街乗りで11.2km/lくらい。高速が主だと12.8km/lを超えています。私のアクセルワークが下手なのだと思います。(4WD)
購入して、9ヶ月経過。燃費はずっと10km/l弱(町中しか走らない)。ハイブリッドなのに残念な結果でしたが、先月の長距離で始めて20km/lに到達しました。行きは14km/lなのに帰りは20km/l。恐らく帰りは下りが多かったからでしょう。(2WD)
燃費は13km/l前後。アコードハイブリッドは20km/l前後でしたが、3,500ccの4駆で、1,880kgの車重を考えれば十分健闘していると思います。燃費よりも走りです。(4WD)
続いてガソリン仕様です。
街乗りメインでリッター10.5km/l。予想よりいい!
11km/lくらいでした。1,500km走行の平均で12.5~13.0km/lです。+今は 平均14.5km/lと 驚異の燃費です。
これだけの重量がありしかもスポーティにふった車なので、購入前は正直燃費は期待していなかったのですが、これが予想に反してとても燃費がよく満足してます。街中9km/l、郊外国道・県道13km/l、高速15~16km/lといったところでしょうか。これは前に乗っていたミニバンよりいい数値です。
口コミを見ているとハイブリッド仕様はオーナーの燃費に対する期待値が高いせいか、実燃費の低さを嘆く声が目立つように思いました。
これに対してガソリン仕様は「意外に燃費が良い」という声が多かったです。これはガソリン仕様であること、ターボ搭載車であることなどからハイブリッド仕様とは逆にオーナーが燃費にあまり期待していなかったことが理由でしょう。
→ 上級セダンのスカイラインを値引きから更に50万円安く買う裏ワザを公開!
スカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の維持費を比較
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/exterior.html
次にスカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の維持費を比較してみましょう。
比較のために取り上げるグレードですが、ハイブリッド仕様は350GT HYBRID Type SP、ガソリン仕様は200GT-t Type SPとします。
まず最初に購入時に必ず発生する費用である車両本体価格と自動車取得税、自動車重量税、自動車税からです。
2017年現在、これらは「エコカー減税」という制度によって減免される可能性があります。
エコカー減税は環境負荷の小さな車にかかる税金を一定割合で減免しよう、という制度で、国が定めた排気ガス基準と燃費基準の達成度合いによって減免割合が変わってきます。
今回取り上げているスカイラインの2つのグレードのうち、ハイブリッド仕様の350GT HYBRID Type SPはエコカー減税の対象となっています。
減免を受けた上での金額は以下のようになります。
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
車両本体価格(税込) | 5,549,040円 | 4,702,320円 |
自動車取得税 | 約55,500円(60%減税) | 約117,500円(減免なし) |
自動車重量税 | 7,500円(75%減税) | 30,000円(減免なし) |
購入時に納める自動車税 | 0円~53,100円 | 0円~36,200円 |
翌年度の自動車税 | 29,000円(50%減税) | 39,500円(減免なし) |
購入時に納める税金の合計 | 63,000円~116,100円 | 147,500円~183,700円 |
自動車取得税は50万円を超える車を購入する際にかかる税金ですが、計算の元になる「取得価額」は実際に車を購入した金額ではなく、車種やグレードごとに財団法人地方財務協会が発行する「自動車取得税の課税標準基準額及び税額一覧表」に掲載されている金額となります。
取得価額は概ね車両本体価格の90%が目安となっており、その3%が自動車取得税となります。
自動車重量税は車の重さに応じてかかる税金で、購入時と車検時に発生します。
350GT HYBRID Type SPの自動車取得税は60%、自動車重量税は75%それぞれ減税されます。
自動車税は車の排気量に応じてかかる税金で、毎年4月1日時点での車の所有者が納める必要があります。新車購入時は当年度分の正規の税額を月割りで納める必要がありますが、エコカー減税が適用される場合は翌年度分が減免されることになります。
350GT HYBRID Type SPの自動車取得税は50%減税されます。
もし仮にエコカー減税がなかった場合、本来は以下のような税額となります。
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
車両本体価格(税込) | 5,549,040円 | 4,702,320円 |
自動車取得税 | 約138,700円 | 約124,000円 |
自動車重量税 | 30,000円 | 30,000円 |
購入時に納める自動車税 | 0円~53,100円 | 0円~36,200円 |
翌年度の自動車税 | 58,000円 | 39,500円 |
購入時に納める税金の合計 | 168,700円~221,800円 | 154,000円~190,200円 |
つまりエコカー減税制度により350GT HYBRID Type SPは約134,700円の税額が安くなっている、ということです。
次にカタログ燃費を元に、年間走行距離1万キロと仮定した場合のガソリン代を計算してみましょう。
前述のようにスカイラインのカタログ燃費はハイブリッド仕様が16.8~17.8km/l、ガソリン仕様が13.0km/lです。今回はハイブリッド仕様の燃費を2WDの燃費である17.8km/lとして計算します。
スカイラインはハイブリッド仕様、ガソリン仕様共に使用する燃料はハイオクとなっていますが、ここではガソリン1リットルあたり135円と仮定します。
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
リッター135円のハイオクガソリンで年間1万キロ走行した場合のガソリン代 | 75,870円 | 103,815円 |
リッター135円のハイオクガソリンで年間2万キロ走行した場合のガソリン代 | 151,740円 | 207,630円 |
同じ価格のハイオクを入れるのであれば燃費の悪いガソリン仕様の方がガソリン代がかかるのは当然です。
年間走行距離が1万キロであればガソリン代の差は27,954円、2万キロであればその倍の55,908円にもなります。
1回目の車検までは3年ありますので、3年間で計算すると1万キロで83,862円、2万キロで167,724円ということです。
これを高いと取るかそうでもないと取るかは人それぞれですが、年間走行距離が多ければ多いほどハイブリッド仕様の方がお得である、ということは言えると思います。
ちなみにハイブリッド仕様である350GT HYBRID Type SPとガソリン仕様である200GT-t Type SPの間には価格差が約85万円あります。
もしも350GT HYBRID Type SPを買った人が「高いお金を出してハイブリッドを買った分の元を取ろう」と考えると、走行距離が年間1万キロだと約30年、2万キロだと約15年かかります。
両者の間は排気量や装備など異なる点が多いのであまり参考にはなりませんが、一応ご紹介してみました。
最後に購入した年、2年目、3年目でそれぞれ必要になる金額の合計を計算してみましょう。
■購入した年(購入月~翌年3月まで)
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
車両本体価格(税込) | 5,549,040円 | 4,702,320円 |
自動車取得税 | 約55,500円(60%減税) | 約117,500円(減免なし) |
自動車重量税 | 7,500円(75%減税) | 30,000円(減免なし) |
自動車税 | 0円~53,100円 | 0円~36,200円 |
ガソリン代(年間走行距離1万キロと仮定) | 6,323円~75,870円 | 8,651円~103,815円 |
合計 | 5,618,363円~5,741,010円 | 4,858,471円~4,989,835円 |
購入した年は自動車税が月割りとなりますので、購入した月によって税額が変わります。ガソリン代も自動車税に合わせる形で購入した月によって翌年3月までの残月数が変わるので、幅を持たせました。
年間走行距離が2万キロの場合のガソリン代はハイブリッド仕様が12,645円~151,740円、ガソリン仕様は17,303円~207,630円となりますので、合計はそれぞれ5,624,685円~5,763,280円、4,867,123円~5,093,650円です。
■2年目
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
自動車税 | 29,000円(50%減税) | 39,500円(減免なし) |
ガソリン代(年間走行距離1万キロと仮定) | 75,870円 | 103,815円 |
合計 | 104,870円 | 143,315円 |
2年目は自動車税が満額課税されますが、350GT HYBRID Type SPはエコカー減税適用車なので本来は58,000円のところを50%減税されて29,000円となります。
年間走行距離が2万キロの場合のガソリン代はハイブリッド仕様が151,740円、ガソリン仕様は207,630円となりますので、合計はそれぞれ180,740円、247,130円です。
■3年目
350GT HYBRID Type SP | 200GT-t Type SP | |
自動車税 | 58,000円 | 39,500円 |
ガソリン代(年間走行距離1万キロと仮定) | 75,870円 | 103,815円 |
合計 | 133,870円 | 143,315円 |
ガソリン仕様は2年目と3年目は同じですが、350GT HYBRID Type SPは自動車税が本来の税額で課税されるようになるのでコストが上がります。
年間走行距離が2万キロの場合のガソリン代はハイブリッド仕様が151,740円、ガソリン仕様は207,630円となりますので、合計はそれぞれ209,740円、247,130円です。
スカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様の比較まとめ
引用:http://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/exterior.html
以上、スカイラインのハイブリッド仕様とガソリン仕様をスペックや燃費、ランニングコストの面から比較をしてみました。
今回ハイブリッド仕様、ガソリン仕様を代表するグレードとして取り上げた350GT HYBRID Type SPと200GT-t Type SPは、搭載しているエンジンが異なるためコスト面での単純比較が難しくなっています。
両車の価格差846,720円が単純にハイブリッドシステムの有無による差のみではないからです。
ハイブリッド仕様はエコカー減税が適用されるため約13万円の優遇を受けることが出来ますが、その分のアドバンテージが発揮されるのは2年目までです。3年目以降のランニングコストはハイブリッド仕様とガソリン仕様でそれほど大きな差はありません。
これはひとえにスカイラインのハイブリッド仕様の燃費がガソリン仕様の燃費に比べてそれほど有利なわけではないからです。しかも両車ともに指定燃料がハイオクのため燃料単価による差もつきません。
これらの点を考えるとコストメリットに期待してスカイラインのハイブリッド仕様を選ぶべきではない、ということが言えます。
少しでも環境負荷の小さい車に乗りたい、より先進的であるハイブリッド車に乗りたいという人、あるいは3.5LのV6自然吸気エンジンの大らかでゆったりとした走りを愉しみたい人はハイブリッド仕様を、ターボ車らしい元気な走りを味わいたい人はガソリン仕様を、という選び方をするのが良いかもしれません。
ちなみに最大トルクはともに35.7kgfmと同じです。つまり加速力は同等だ、ということです。
ただし最大トルクを発生するエンジン回転数がハイブリッド仕様は5,000rpm、ガソリン仕様は1,250~3,500rpmとガソリン仕様の方が低めになっています。
わかりやすく言うとハイブリッド仕様はスムーズに回転が上がっていく伸びやかなフィーリング、ガソリン仕様は低回転域からターボがモリモリと利いてくる力強いフィーリング、という感じになるでしょうか。
この辺りのエンジンの味付けの差も考慮されると良いかと思います。
個人的にはハイブリッド仕様の自然吸気エンジンの方が今のスカイラインのプレミアムセダン的なキャラクターには合っていておすすめです。